そんな思いから、私は彼のことをすんなりと『聡』と呼ぶことができた。

聡もまた、同じ気持ちだったのか。

次の会話の時には、詰まることなく、私のことを『依子』とさらりと呼んだ。



聡が一緒にいてくれたおかげで、クーポラの頂上までは思った以上に早く着いたような気がした。


頂上に出た瞬間に、目の前に飛び込んできたフィレンツェの町並み。

世界遺産に登録されているだけのこともあって、それは圧巻だった。


「すごい……」


あれだけ憂鬱だったくせに、その町並みで一気に心が晴れる。