「依子を連れてどこか遠くに逃げようかと思ったこともあったけれど、おまえの人生まで奪ってしまうような気がした。……結局は傷つけてしまう結果になって……」


箱をテーブルに置いたあと、聡は「ごめん」と、力ない笑顔で言った。

私は箱から指輪を取り出し、聡に手渡す。


「……もしもまだ私のことを思ってくれていて、これからは真実だけで私と向き合ってくれるのなら、この指輪を私の指に嵌めてくれる?」

「……依子……?」

「私は聡とずっと一緒にいたいの」


私を本当に思い、会いたかったという聡が、指輪をすんなりと嵌めてくれる保障はどこにもない。

それでも私は、祈るような気持ちで聡を見据える。


「……苦労かけると思うよ。俺は誠司さんみたいに、金も地位もないし」

「それは私も同じ。二人一緒だったら大丈夫だよ」