開けてみて、と促されて、私は緊張した面持ちで紙袋の中から取り出した淡いブルーの箱を開けた。


「これ……」


そこにあったのは、銀色に光るペアの指輪だった。


「騙したくせに、結婚したいって本気で思うようになってさ。カフェで得た金は、汚い金だったから、自分で見つけた会社の給料で買ったんだ。……まぁ、買ってすぐに、おまえとはあんなことになってしまったけど」

「……聡……」


指輪が収められている箱を、私から取り、聡はそれを眺めながら言葉を続ける。


「ドゥオーモの階段は、本当に辛かったよ。これから本格的にこの子を騙し続けるのかって思ったら、何度も逃げ出したくなった。……でも、自分を大学卒業まで援助してくれた玲子さんを裏切ることができなかったんだ」


気が遠くなるようなドゥオーモの長い階段。

それを辛かった、と言ったのは、肉体的なものではなく、精神的なもの。