月島グループは大企業。

そこのトップに君臨する女社長が、若い男を飼っていて、私情の縺れからナイフで刺されたなんて知れたら、それこそ大きなスキャンダルになる。

あのとき副社長が、未然に防いだと言ったのは、このことだったのだろう。


「で、副社長が、お袋と顔を合わせないように、間に入ったんだよ」


――自由になりたいんです……。

ナイフを副社長に預けた聡は、うなだれた様子でそう言ったという。


既婚者でもある社長と、この関係をズルズルと続けるわけにもいかない。

そして、私を傷つけたことを悔やみ、このまま飼い殺しになるくらいなら、社長を殺めて冷たい鉄格子の中で生きていく方がいい、と……――。


「副社長が、彼を自由にしたんだ。お袋の知らないところに彼を行かせた」

「……どこに……」


聡が今どこにいるのか。

そんなことはもう、どうでもいいと一度は諦めたくせに、所在を訊く言葉が口から零れる。