「あ……」


空に一番星が姿を現した、会社帰りの夕暮れどき。

マンションに着くと、一匹の仔猫が可愛らしい鳴き声を上げながら私に近づいてきた。


「……かわいい……。野良猫かな……」


首輪もついておらず、毛並みも酷いものだった。

潤んだ大きな瞳は、私をじっと見ている。


「おいで。ご飯あげるよ。その前に、身体をキレイにしようか」


話しかけながら仔猫を抱きかかえ、私は部屋へと急いで向かった。



風呂に慣れない仔猫を洗うのは一苦労だった。

さっきの可愛らしい鳴き声ではなく、助けを求めるかのようにしゃがれた声で鳴き始める。

ただ身体をキレイにしているだけなのに、悪いことをしているみたいで胸が痛む。