いろんな国の言葉が耳に入って来て、その中には、しゃがみ込んでいる私に対して励ますような声も混ざっていた。 「――大丈夫?」 英語、フランス語、イタリア語。 いろんな言語が飛び交っていた薄暗い階段。 そこで、自分と同じ言語を話す声が背後から聞こえてきた。 振り返ると、そこには私と同い年くらいの日本人が立っている。 額ににじんだ汗を拭いながら、彼は、見ず知らずの私に対して微笑む余裕さえも持ち合わせていた。