緊張した面持ちの新入社員が、社内研修で各部署を渡り歩いている四月のはじめ。

昼の休憩中に、私は誠司に呼び出された。


「……副社長から、ある話を聞いたんだけど」


誠司は開口一番にそう切り出し、私はビクリと身体を震わせた。


「お袋の『燕』が、おまえにちょっかい出していたって」

「………」

「俺と別れたあとに付き合った彼って、その『燕』なんだろう?」


副社長は、全部知っていたんだ。

いま思えば、辻褄が合う。


社長がまだ真実を暴露していなかったとき、私は遊びに出かけた燕の話を副社長に漏らしたことがあった。

そのとき副社長は、重い口調でその燕の話をした。


『飼い主に従順な鳥でね、あれは……』