『そっか……。まぁ、それも仕方ないことよね。で? 誠司さんとヨリを戻すの?』


香織は……――。

誠司の時と同じように、気持ちの変化を仕方のないことだと言い、私と誠司がヨリを戻すことに期待を抱いた。


そして、誠司は……――。


『……俺はまだ、依子のことを想っているから。昔のことは忘れて、いつでも戻っておいで』


ずっと抱えてきた気持ちを打ち明け、私は明確な答えを出さず、静かに笑うことしかできなかった。


聡とは、あの日以来、偶然会うこともなかった。

ほんの一瞬でもいいから、遠くからでもいいから聡に会いたい。

マンションの前を何度も通るけれど、聡に会うことはもちろん、彼がいつも乗っていた車を見かけることさえもなかった。