「――……もちろん。意外と簡単に落ちてくれたから助かったよ」


耐え切れず、私はソファから立ち上がり、聡の目の前に歩み出ると、力任せに彼の頬を叩きつけた。

聡は叩かれた頬を手で押さえ、冷たい笑みを浮かべる。

社長によく似た、冷たい笑み……――。


「もう……依子とは一緒にいられない」


その冷酷な笑みの向こうに、少しだけ見える寂しげな瞳。

安々と騙された女を哀れんでいるのだろう。

そんな瞳で見ないで。私は下唇を噛み締め、目を逸らす。


「――またな、依子」


違う。その言い方は間違っている。

また会おうといわんばかりのニュアンスに、私は胸を締めつけられ、嗚咽を漏らす。