聡のマンションに着いて数分ほど待ったところで、彼は帰ってきた。
私を見るなり、聡は小走りで駆け寄ってきて、その勢いのままに私を包み込む。
部屋に向かうエレベーターのなかで、何度も交わすキス。
それが偽りだったとしても、私はしがみつくようにして聡を求める。
どうか、私への想いだけは真実でありますように……。
「今日の晩メシは何がいい?」
部屋に入り、背広を脱いだ聡は、そのままキッチンへと行き冷蔵庫の中を覗いた。
「あー、牛乳の賞味期限が近いなぁ。シチューにする?」
作ってもらうよりも、作る方が好き。
主婦みたいなことを言う聡の背中は、とても大きくて、そして、愛しい。
私はその背中に向かって、静かな声で言った。


