カフェの前にずらりと並ぶ鉢植えに水を撒いていた男性店員が、私を見てにこにこと笑っていた。
「最近いらっしゃらないので心配していました。いや、元気そうで安心しました」
優しい言葉をかけられ、涙腺が再び緩む。
口角を無理に引き上げ、私は無言のまま精一杯の作り笑いをした。
「……伊佐は元気ですか?」
なんの躊躇もなく、さらりとそう訊いてくるのは、聡と再会したあの日、聡がサービスしたケーキを私に運んできたのが彼本人だったからだろう。
「元気ですよ。新しい職場で頑張っています」
「そっか……。でも、伊佐の退職は残念でしたよ」
水撒きを終えた彼は、ホースを片付けながら淡々と話し始めた。