――鳥篭の中にいた燕は、毎日なにを思っていたのだろう。


無機質な鉄格子から見える、途切れ途切れの空。

餌を貰えるためなら、飼い主の言うことを何でも聞く、従順な燕……――。



会社を飛び出した後、私の足は自然と、聡が以前働いていたカフェへと向かっていた。

頭のなかは依然として真っ白なままで、整理することも、何かを考えることもできずにいる。


社長と聡は、どんな関係なんだろう。

うっすらと答えは出ているのに、私はそれを認めたくなかった。


燕……――。


社長がそう呼んでいた、空っぽの鳥篭の主。

その燕は、鳥なんかじゃない。