「聡よ。遊びに出かけた、私のかわいい燕。あなたから言ってくれないかしら? そろそろ飼い主のもとに戻りなさいって」


――どうか……。

これが夢であってほしい。


社長の決定的な言葉を聞きながら、祈ることはただ一つ。


なにかの間違いであってほしい。

社長の悪ふざけなのだ、と。



会社のトップでもある社長に、役職も持たない社員が背いたのは、きっと私が初めてかもしれない。

続きを言いかけた社長を、「待ちなさい」と引き止めた社長を……。

私は振り切り、逃げるようにして社長室を、そして会社を飛び出した。