「そう、分かったわ。副社長には私から連絡しておくわ。ありがとう」 私が出したお茶を一口飲んだ社長は、深い溜息をつき、椅子の背もたれに身体を埋める。 「――ねぇ、依子さん」 「え……?」 それまで私を「萩原さん」と呼んでいた社長。 「依子さん」と呼んだ彼女の顔には、冷たい笑みが広がっていた。 「――私の燕は、元気かしら?」 「―――?」 なぜ私に問うのだろう。 私は無言のまま、小首を傾げる。