「――はい。任せてください」 過去のことは、もう振り返らない。 聡が言ったように、誠司のお母さんだと思うからいけないんだ。 彼女は、私の会社の社長。それ以外には何もない。 副社長が社長室を出る間際、私はポツリと呟くようにして彼に言った。 「……飼っている鳥が戻ってきたら、社長も少しは元気が出るんでしょうね」 「……鳥?」 「えぇ。遊びに行かせたきり、戻って来ないって……」 私の話を聞いて、副社長は「ああ、あの鳥か」と思い出したように口を開いた。