それでも私たちは、暇さえあれば、結婚の話をするようになっていた。


「なぁ、依子。ちょっと変わった式にしようか」

「……変わった式?」


その話を聡がしたのは、夏の終わり。今年最後の花火大会を聡のマンションのベランダで眺めていたときだった。


「フィレンツェのヴェッキオ宮」

「……フィレンツェ!」


私たちが出会った、大切な思い出の場所。


「ヴェッキオ宮って、たしか市庁舎だったよね?」

「そう。そこでさ、フィレンツェの市議立会いのもとで式をするんだ」

「へぇ……。なんだか変わっているね」