でもお母さん……社長は、私たちが成長していくにつれ、私の存在を疎ましそうにしていた。
「うちの親は、ただ資産がたくさんあるってだけで、中身は平凡な人間だよ」
「本当?」
「あぁ。親父なんかさ、趣味で畑を耕すような人だし。お袋にいたっては、有名ブランド品の名前にも疎いし」
「……安心した」
ホッと胸を撫で下ろす私を見て、聡は笑いながら私の頭をくしゃりと撫でた。
その流れのまま、聡の顔がゆっくりと私に近づいてくる。
やがて唇に感じるであろう聡の温もりを、私は目を閉じて待つ。
しかしそれは、聡の携帯電話が鳴ったことで、見事なまでに期待を裏切られた。


