お風呂から出たあと私と聡はベッドに寝転がり、まるで初めての夜更かしに心を躍らせる幼子のように、互いのことを楽しく話した。


聡は大学卒業後、定職に就かずあのカフェでバイトを始めた。

フィレンツェに行ったのは、ある程度お金が貯まり、息抜きにどこか旅行に行こうと思い立ったから。


家族は資産家の両親だけ。兄弟のいない、一人っ子。

だからこそ、親は自分に高級なマンションや車を買い与えたんだろう、と、聡は苦笑した。


「……普通の家庭に育った私と結婚なんて……、御両親は許してくれるのかな」


誠司とのことが頭をよぎる。

気さくな誠司のお父さんは、「依子ちゃんが娘になるのは大歓迎だから」と口癖のように言ってくれた。