考える?

なにを?


はじめて聡に抱かれたとき、私は自分をなんて浅はかな女なんだろうと思った。

そして、いまも。

聡のことをまだ深く知らないのに、私は答えた。


「考える余地もないよ。私も聡と結婚したい」

「……依子……」

「だけど……――」


濡れて頬にはりついた髪を指で掃いながら、私は聡に言う。


「聡のことをもっと教えて。私はまだ知らないことがたくさんあるから」

「……そうだな。俺は依子に自分のことを話していなかったな」

「うん。でも、とりあえず、上がろう。私、のぼせてしまいそうだから」