「……俺さ、カフェの仕事を辞めようと思うんだ」


聡がそう話したのは、夕食後に一緒に入ったお風呂の中だった。

ミルク色の湯船に浸かり、聡は私を後ろから抱きしめながら話し始めた。


「やっぱ、サービス業はダメだな。依子との時間がつくれない」

「……ねぇ。私のために辞めるってこと?」

「それもあるけどさ。前に言ったろ? 真っ当な職を得るって」


湯船のなかから少しだけ覗いた私の肩に、聡は自分の顎を乗せる。


「土日が休みの、社員の仕事を探す」

「……そうだね。聡と私の休みが同じだったら、いろんなところに行けるよ」

「家族サービスもできる、いい父親にもなれるしな」

「……え?」