私はただ、「覚えることが多くて大変だった」と、ありきたりなことを言う。
「……社長とは? やっぱり気まずかった?」
「……ううん」
実際に顔を合わせたけれど、そこに気まずい空気は流れなかった。
やっぱり彼女は社長なのだ、と思った。
誠司のことも、私が社長室に異動になった経緯も話さなかった。
ただ、遊びに行っているという鳥のことだけを話した。
聡のいうとおり、誠司の母親だという目で見ていたから変に勘ぐったりしていたのかもしれない。
そこに私情を挟みこまなければ、私はきっと、社長室でやっていける。
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