「当然でしょ」


理恵子はパスタを口に運びながら、張り切ったような様子で返す。


「あ! 確かエレベーターがあったよね? 依子、私と一緒にエレベーターで昇ろうよ?」


私と同じように、何百段という階段を上ることに躊躇していた香織が、嬉しそうに微笑んだ。


下調べもよくせず、ドゥオーモのてっぺんに上ってフィレンツェの町並みを見たい。

そんな私の楽しみが消えてしまったのは、今朝のことだった。


クーポラの頂上に行くには、何百段という階段を上らなきゃいけない。

私たちのなかで、一番フィレンツェに行きたがっていた理恵子。