「本日付で異動になりました、萩原です。宜しくお願い致します」 異動初日。 私は極度の緊張を抱えながら、社長室にいた。 初めて入る社長室は、空気からして違っていた。 深紅のカーペットに、高級な調度品。 黒の革張りのソファ。 その部屋の一角には、空っぽの鳥籠が置いてあった。 「今日から頑張ってね。まずは室長の添田さんについてちょうだい」 「はい」 社長は座り心地の良さそうな椅子に身体を預けることなく、姿勢正しく座っていた。 『凄腕の女社長』 聡が言っていた言葉どおりの貫禄がある。