運ばれてきた前菜をまえに、私と聡はまだシャンパングラスを手にしたままだった。 「……それがどうした?」 「え……?」 「会社では社長と社員に代わりないだろ?」 「そう……だけど……」 聡は底に残っていたシャンパンを飲み干し、再び口を開く。 「もし私情を挟みこむような会社なら、そんなとこ名ばかりの一流企業だよ。依子は堂々としていればいい」 「でも……」 「いま依子が付き合っているのは俺だろ?」 私は無言で頷く。 「それが現実。元彼氏の母親だって思わなければいい」