自分の母親でもある社長の登場に、誠司は苦笑する。
社長がいきなり食堂を訪れたことで、それまで賑わっていた食堂内はあっという間に異様な緊張感に包まれた。
社員たちとは違う緊張感を味わっているのは、きっと私だけだ。
「――あら」
返却口にいた私たちを見つけた社長は、笑みを浮かべながら近づいてくる。
「……珍しいですね。社長が社員食堂に来るなんて」
母子といえど、一歩社内に入れば、社長と社員の間柄になる。
嫌味らしく言う誠司に、社長は楽しそうに笑う。
「たまには社員との交流もしないとね」
言いながら、社長の視線が誠司の隣にいる私へと移った。


