翌朝、まだ薄紫の色を帯びている空を眺めながら聡のマンションを出た。

聡のマンションは、入り口のエントランスはもちろん各戸のドアさえもオートロックになっていたから、聡が眠っていても、私は安心して部屋を出ることができた。


聡と一緒の時間を過ごすようになって、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。

私はまだ、聡の部屋の合鍵を持っていない。

私もまた自分の部屋の合鍵を聡には渡していなかった。




「――……そりゃあ、まだ早いだろ?」


会社での昼の休憩時間。

ざわつく社員食堂で、日替り定食の唐揚を一口食べた誠司が、当然のように私に言った。


誠司とは別れた直後こそ気まずかったけれど、社内で時折顔を合わせる誠司があまりにも屈託のない笑顔で接してくるので、私のなかの蟠(わだかま)りも少しずつ消えていった。

そして今は、互いの恋愛についても話すようになっていた。