「泊まっていけよ。明日はここから出勤したら?」


いつも聡は私の左腕を掴み、そう言って引き止める。


同じ服は嫌だから。

私は必ず同じ言葉で、それを断っていたけれど……。


「――うん。泊まっていく」


いつからか、私は自分のマンションに帰ることをやめ、そのまま大きなベッドのなかへと再び潜り込むようになっていた。


聡の部屋に泊まる代償といえば、翌朝ずいぶんと早く起きてマンションに帰り、慌しくシャワーを浴びて出勤準備をするだけ。

朝から時間に追われてバタバタと動き回るのは好きじゃない。

でも、聡と少しでも長く一緒にいられるのなら、私はそれを喜んで受ける。