――雛鳥は、最初に見たものを親だと思い込む。


私はそれに似たような感情を、知らずのうちに誠司に抱いていた。

誠司を親よりも慕い、友人よりも大切にしていたと思う。


旅立った雛鳥がつぎに求めたのは、番いとなる雄鳥。

その雄鳥とは異国の地で出会い、素性も知らないままに、成長した雛鳥は身を委ねていく。



誠司と別れたあと、私は月島グループから内定取り消しの連絡が来るんじゃないかと、穏やかではなかった。

けれど、その連絡はないままに入社式を迎えた。

社長挨拶で、入社式の壇上に立った誠司のお母さん。

会場の中央の席に座っていた私は、彼女の顔を見ることができなかった。