誠司と交わした会話はすべてを記憶しないのに。

聡との会話や思い出は、ひとつ残らず正確に覚えている。


『またな、依子』


どうして、私と聡は一緒にいることが許されなかったのだろう。


いま思えば……。

きっと聡は、私が幸せの渦中に身を泳がせていた頃から真実を知っていたんだ。