会場の外に出ると、生暖かい風が身体を包み込む。
もうすぐ四月。その独特の春の匂いが、私の鼻の奥をツンとついてきた。
「うわー、彼氏のお迎えが来てるねー」
うらめしそうな香織の声を聞いて見ると、駐車場には普段着に身を包んだ若い男の子たちが何人かいる。
外で突っ立って、会場の入り口を気にしている者。
車のなかでタバコを吸いながら、暇を持て余している者。
会場から彼女が出てくるのを、今か今かと待っていた。
「……あ」
そんな光景を見ていると、私の隣にいた桜が声を上げた。
「ごめん、私、ここで……」
すまなそうに言う桜が次に見た方向には、彼女に向かって手を振る一人の男の子がいた。


