「誠司さんの言うとおり、もう終わったことなんだし。依子は聡くんと幸せになってよ」
グラスの底に残っていたシャンパンをすべて飲み終えた香織は、そう言って私を元気づけてくれた。
誠司との別れ。それは私たちの問題だけではなかった。
父親同士が仲が良く、幼い頃から家族ぐるみの付き合い。
誠司と別れたことを電話で父に伝えると、父はただ「そうか」と言うだけで理由を問い詰めたりはしなかった。
母は、どちらかといえば喜んでいたと思う。
誠司のお母さんとは昔からそりが合わなかったから。
父とは対照的に、母は心なしか明るい声で「まぁ、しょうがないわね」と私に言った。
対して、誠司の両親からはなんの連絡もなかった。
きっと今頃、誠司のお母さんは『次の相手』を探しているに違いない。
月島家の嫁としてふさわしい、誰かを。


