私を出迎えてくれた、この部屋の唯一の同居者でもある飼い猫のハナ。

ハナは喉をごろごろ鳴らしながら、私の足元に擦り寄ってくる。


猫は気まぐれだ。

こんなに私に甘えてくるくせに、キャットフードでお腹が満たされると、フイとそっぽを向いて自分のねぐらへと戻って行く。


「おまえは気楽でいいねー」


深い溜息をついたあと、私はベージュ色のソファにどかりと腰を下ろし、ゆっくりと目を閉じた。

目を閉じると、いつも聡のことを思い出す。


『――もう、依子のそばにはいられない』