「おっ、悪くないね。俺も頼もう」 片手を挙げて、店員に同じものを頼んだ。 煙草を口にくわえたまま。 私は正直、面倒くさかった。隣の男も、この雰囲気も全て。 ついでに云うと、私を取り巻くもの全てに。 好きな煙草の匂いだけが心地よかった。 最初に感じた、嫌な気はしない声は錯覚だと言い聞かせた。 ……錯覚なら、言い聞かせるまでも無いことは判っていたのに。