「ほら……やっぱり抱き心地最高」 「な、な、な……」 まともな言葉も出ない私を、やっぱりまた腕に込めた優しい力で離してはくれなくて。 「あと十秒だけ、そのまま」 逆らえる訳がない。 心の中でなんとなく数え始めた数字が十個を過ぎても、私は柔らかなぬくもりに包まれていた。 「アキト? たぶん結構前に十秒たったよ。てか、ここ道端だし……」 「あ!」 まるっきり忘れてた、と云わんばかりの反応でようやく離れたアキトは恥ずかしそうに笑った。 その笑顔に、今日何度目かもわからないノックアウト。