「虫くらいで泣くな」


そう云って、キッチンへ戻るアキトを恨めしそうに見上げながら、告げ口するようにナオヤが呟いた。


「……そう云うアッキーだって、ホントはオバケがコワイくせにぃ〜」


一瞬、動きが止まったように見えたアキトが低音で反論した。


「こ、怖いんじゃない。見たことないから、納得がいかないだけだ」


ていうか、アキトさん。
その顔が怖いです。


切長の鋭い眼光に気圧され、完全に負け犬と化したナオヤは口をつぐんだ。