『ありがとう』 って、ナオヤにちゃんと云ったことあるかな? 多分、ないな。 耳元から遠ざかるナオヤの「ありがとう」が繰り返し頭の中でコダマした。 本当にそれを云わなきゃならないのは私の方なのに。 アイツ、未だに傷のことまで心配しやがって…… 私の背中には、 消えない火傷の跡がある。 胸の奥まで喰い込むように深く根差した傷が時々痛み出すんだ。