ほんのちょっとの間だったんだと思う。 「ありがとう……」 かすれた声が耳元から遠ざかる。 やっぱり、時間を止める魔法なんて使えやしないんだな……。 一瞬だけ、ぎゅっと両腕に力が入って離れていった。 「どさくさに紛れて、抱きついてんじゃねぇぞ……」 振り向く勇気はなかったから、そのまま誰もいない方向に話しかけた。 返事が後ろから返ってくる。 「背中じゃ、傷が痛いかと思って……ごめん」 ああ、もう。 そんな声出すなよ。