「そんで、なんで男になんの?」


「いや、元彼が吸ってたとか?」


「あぁ、そういう発想か」


「違うの? 俺も結構長く吸ってるけど、知ってる女いなかったような気がするなぁ」


「サルトルが愛煙してたんだよ」


「サルトルって、あのサルトル? えっ、文学少女なの?」


「いや、只の後付け。前に迷走しながら吸ってた時期に見つけて、そのブルーに一目惚れした」


「へぇー、そうなんだ。てか、俺も一目惚れしたんだ。コイツに」



その指が差さしたのは、翼の生えた兜。
『ガリア人の兜』だ。



「ふぅーん。アタシも好きだよ、そのデザイン」