その日の帰り、あたしは桜の家に行った。
桜の家は学校の近所だ。
あたしは桜の家のインターホンを鳴らした。
「はい…」
インターホンから小さな声がした。
桜だ。
「桜?あたし、美羽!!」
「帰って。」
あたしは硬直した。
桜は、あたしを寄せ付けようとしなかった。
「桜?」
「今は会えない。会える格好じゃないし。」
「あたしそんなの気にしないよ。だから…」
「本当に、どんな状態でもいい?」
「いいよ。」
「じゃあ入って来て。鍵はかかってないから。」
あたしはそっとドアを開けた。
本当に鍵はかかってなかった。
「お邪魔します、」
桜の家は、何だか冷たかった。
まるで、誰もいないかのようだった。
少なくとも、桜のような雰囲気を醸し出してはいなかった。
「桜?」
桜は出てきた。
でも、桜じゃないみたいだった。
ジャージを着て、髪はボサボサ、目はいつもみたいにキラキラしてない。
まるで、
魂の抜けた操り人形。
「桜?!」
「あがって、こっち。」
桜は部屋に案内してくれた。
あたしは、唖然とした。
部屋は散らかっていた。
ホコリもたまっていた。
だが更に驚く事に、その部屋と桜はバランスがとれていた。
あたしは黙って立ち尽くしてしまった。
「ね?だから会えないって言ったでしょ?」
「桜?どうしちゃったの?!ねぇ!」



