あたしは暗い廊下を一人で走った。
あたし以外に廊下にいる人はいなかった。
あたしは無我夢中で走った。
あたしは足を止めた。
―308号室―
あたしは重い病室の扉を勢いで開いた。
中は真っ暗だった。
あたしが目を覚ました時と同じくらい暗かった。
あたしは電気を点ける。
そこには2つのベッドがあった。
2つとも人が寝ていた。
お父さんとお母さん…
二人はまるで死んだかのように静かに眠っていた。
「お父さん!!お母さん!!」
あたしは2つのベッドの間に立った。
返事がない。
あたしはお父さんを揺さぶった。
「お父さん!」
やはり返事は返って来ない。
あたしはお母さんの方にも同じ事をした。
「お母さん!!お母さん!!」
返事はない。
だが、掛布団は確実に動いた。



