その影は女の人のもののように見えた。
お母さん!!
あたしは喜びに満ちた。
やっぱりお母さんはあたしのお母さんだ。
あたしが寂しい時、不安な時、いつも傍にいてくれたお母さん。
今だって来てくれた。
あたしは喜びの余り声も出なかった。
その時は。
だがそれも束の間。
現れたのは白い衣服を身にまとった女性。
お母さんじゃない…
あたしの絶望はまた蘇る。
女の人はあたしに寄って来る。
「大丈夫?痛い所はない?」
あたしは女の人が看護婦である事に気付いた。
あたしは頷く。
「そう、じゃあお医者さん呼んでくるね。」
看護婦さんはそう言って部屋をでて、またすぐに戻って来た。
今度は医者も一緒だった。
「大丈夫?」
医者はあたしに言った。
「はい…」
「どこか気分の悪い所ないかな?頭がクラクラするとか、気持ち悪いとか。」
「無いです。」
「分かった。じゃあ血圧測らせて。」
それからあたしは血圧を測らされたり、注射をされたりした。
異常はないようだった。
全てが一通り終わるとあたしは医者に訊いた。
「美羽のお父さんとお母さんは?」
すると医者は一瞬表情を暗くして言った。
「今検査したりしてるんだよ。お大事に。」
そう言って医者と看護婦は出ていった。



