2LDKのお姫様

早い事にこしたことはない。婚約ともなれば、シオリも今後の事で迷うことが少なくなるからだ。


シオリは最低三年、市内に残って研修を受ける。つまり、三年はここに独りだ。


大は地元へ帰って、実地研修に入る。実家に戻るため、確かに独りでは無いが、2人の時間はまず確保出来ない。


だがシオリは一応、市内を離れる事には積極的だと語っている。研修が終われば、出来れば大の地元でキャリアを始める意志もあるらしい。


別に大もその事を強制はしない。シオリの努力の結果には口を挟めない。成り行きに任せるしかない。


一応、大の研修前に彼の両親に会う事は決まっている。


長い間、彼は一度も両親の事を口にしなかったが、シオリは一度会っておきたかった。


長い間、彼を拘束してきたような気がして、迷惑をかけたのではないかと、心配していた。


シオリが独りになるお盆や夏休みも、市内に残っていたし、彼の家からおくられてくる仕送りをよくお裾分けしてもらっていた。


お礼を伝えたかったが、伝えておくの一言で、よく済まされていたので、感謝の意も伝えなくてはならない。


だが、不安は募る。