2LDKのお姫様

「お、きたきた」


ホノカは例の通り、ピンピンしていた。


「お見舞いの品はちゃんと持って来たかな」


「持って来ましたよ」


重い果物カゴをどうにか運んで来た彼の苦労は……


「じゃあ、さっそく剥いてくれ」


一瞬にして消える。だがまあ慣れた光景だ。大も思わず笑みが零れる。


『元気が良いわね』


「ろんのもちだよ。ここのご飯凄く美味しいし、看護士さんたちも面白くてさ」


『元気が良すぎるんじゃない』


2人は一気に寒気がした。シオリが満面の笑顔なのが原因だった。


その笑顔は確かにエンジェルスマイル(良発音)なのだが、時にそれは閻魔大王もかくやと言われるくらいに恐ろしいのだ。


「いや、シオリ、ほら……私もう退院出来るし、大した事にはなら無かったんだから」


確かにそうだが、シオリには大した事だ。急な帰省で荷物は色々忘れてくるし、ホノカとしゅいろのご両親へのお詫びの連絡。病院の斡旋。しゅいろの受験戦争。


全く大変な目にあったのだ。


それに引き換えホノカは飲んで倒れて安らかにベッドに横たわり、入院ライフを謳歌している。


イラつかない訳が無いさ。今にも天国行きの切符を全て地獄の業火で焼き払う勢いだ。


「これは、あの……大くんが飲ませるから」


「はあ、先輩が無理矢理飲ませて来たからでしょ」


大も勿論、道ずれだ。


「ああ、あと大くん酔ってることを良いことにセクハラしようとしてきました」


「あれは、先輩が……」


まるで罪のなすりあいである。


勿論、2人とも……


『2人とも、退院したらお酒と夜食は1年禁止ね。破ったら即、解剖します』


そう言い残して、シオリは果物を持って奥へ去っていった。