2LDKのお姫様

目が朝日に霞む。どうやらもう昼が近いらしい。丁寧に掛けられたタオルケットが暑く、少し煩わしい。


どうやらホノカは先にどこかへ行ってしまっているようだ。横には微かに彼女の香が残っているだけで、脱け殻のように彼女の姿は消えていた。


さて、起きるのは良いのだが、こういう時の大は少し困りものである。


たいてい、こういう起き方をした後の彼は、何故かいつも機嫌が良くない。


この前も昼過ぎに起きた日は、一日中ずっと黙り込んで独り勉強部屋にこもっていた。


あのシオリでさえ、そんな日の彼にはなかなか話し掛け辛いらしく、ひっそりとベッドに忍び込む夜も少なくない。


だがしかし、それでも恐れず、そんな彼の側を離れない彼女の愛にはホノカたちも敬意の念を示さずにはいられなかった。


ただ彼は別に機嫌が悪いわけではないのだ。「早起きは三文の得」、「時は金なり」を人生のモットーにしている彼にとって、昼過ぎまで寝入ることはあまりに不甲斐ないらしい。


バイトを何個も掛け持ちする彼にとっては尚更だ。7時から12時まで働けば3日はゆうに暮らしていける。


だからそんな日は無心になって勉強をするらしい。勿論それは彼にとっては愚者の自己満足。


今回もまたその愚行を繰り返す予定だ。しかし、一応今回はまずケータイに目をやった。もしかしたらシオリから連絡が来ているかもしれない。


大はシオリの優しさに惚れているが、まあ一応怖いは怖いのだ。ケータイの画面を覗く彼の目は未だ寝ているのか、半開きだ。


連絡は無かった。とりあえず彼は二日酔いの体を持ち上げ、ゆたゆたとキッチンの方へ向かった。


部屋から出るとホノカは意外にも、リビングのソファーで眠っていた。


「……」


彼はその彼女の憎たらしい寝顔を覗き込みながら得意気に頬を緩めたのだった。