2LDKのお姫様

2人は2人だけの奇妙な時間をゆっくりと味わった。


意外にこういう機会は少ないのだ。現にホノカと大が会うのは1ヶ月ぶりだ。


「そろそろお酒、片付けますけど、もう良いすか」


「うん。ご馳走さまでした」


ホノカは深々と頭を下げて、大は食器を運ぶ。実に面白い光景だ。ホノカもこればかりには頬が緩む。


先月、大が忙しいと言って家にしばらく訪ねて来ない時があり、浮気調査だと言ってシオリを無理やり大のバイト先に連れて行かせた事があった。


大は沢山のバイトを掛け持ちしており、その日は塾講師をしていた。


市内では有名な某予備校で、彼は浪人生に個別指導をしているようだったが、そこでの彼は決してこんなに頭を低くする様な役職では無いようだった、らしい。


生徒や講師の後輩から慕われていて、彼の指導室には指導を待つ列が出来ていたほどだったと言う。


そんな彼だが、ここに来ると全く別人だ。


少し可哀想にも思うが、彼がホノカやしゅいろたちにコキを使う姿など想像出来ないのが正直な所だ。


そんな彼もは悪くないと思うが……


「よし、久しぶりに私が洗い物をしよう。大くんはリビングに行ってて良いよ」


「いやいや、しますよ」


何を企んでいるかは知らないが、そんなやり取りに彼が可愛くも、そしてシオリに気を使う姿が想像できて不憫にもホノカには思えるらしい。


「シオリもいないし、久しぶりにHする」


「しないです」


「どうしてご無沙汰でしょ。したくないの」


後ろからすり寄る感覚が不気味だ。


「だいたい、久しぶりって、俺たちにそんな過去は無いです」


「ふん、可愛くないの」