2LDKのお姫様

「あれ、シオリさんは」


その頃、大はシオリのいないアパートの一室を訪ねていた。


「ああ、シオリなら帰省してるんじゃないの。私も昨日帰って来たばっかりだから、よく知らないけど」


家にいたのは帰って来ていたホノカだけだった。


「あ……」


そうなのだ。彼は忙しいあまり、すっかりシオリの帰省の事を忘れていた。


「お土産メールはしといたから」


まあ、彼から連絡が来ないのは無理もなかった。


「ちょ、それ俺のケータイ」


実はホノカが大のケータイを持っていたのだ。


「失くしたと思って、ずっと探してたんすよ」


「へへーん。この前大くん家で借りたバッグの中に入ってるの、途中で見つけちゃったからさ」


全くけしからん人だ。呆れてものも言えなかった。


「だいたい……」


とにかく、ケータイを取り返して画面を見る。しかし、シオリからの連絡はなかった。


「シオリからは何も連絡来てなかったよ」


「中見たんすか」


「何、やましい事でもあるの」


思わずどもる。


「いや、別に無いですよ」


いや、本当にやましい事は無い。もちろん、シオリとのやり取りは、見られるとマズいのは確かだが、自分が。


「確か土曜日から帰ってるんじゃないの。もう少しで休みも終わるし、週末までには、こっちに帰ってくるわよ」


そう言いながら、ホノカはリビングのソファーに寝転がり、左手にはワイン、右手にはチーズと、まるで王様のようにシオリのいない時間を満喫していた。


午前中からこの人は……と、大は呆れるしかなかった。