2LDKのお姫様

『……』


無言のままパスタを口に運んでいる。


まあ無言で食べてるということは、機嫌はそこまで悪くないだろう。


「ここ元々はただの喫茶店だったんですよ。だけどここでバイトしてる香坂ってヤツが住むようになってからディナーも始めたらしいです」


『そう』


冷ややかな対応には大も慣れている。


「大、これ店長からサービスだってさ」


冷ややかな食事を見て何となく事情を察した店長が、可愛そうな大にサービスをしてくれたのだ。


しかし、香坂が持って来たのは。


『あ、あんパン』


「いや、何かパイ的なモノですよ」


ふっくらとした薄茶色の丸い形。上に乗っている黒ゴマ。


どこからどう見てもあんパンにしか見えない。


「うちさ、来週からパンも売り始めるらしくて、試食させてあげるんだってさ」


最悪だ。


恐る恐る彼女の方を見る。


『………』


冷ややかな目だ。


「あの……香坂」


「ああ、飲み物だろ」


じゃなくて。


「二人ともコーヒーで良いよね」


『はい、お願いします』


サービスは仇になっていた。