2LDKのお姫様

「いらっしゃ、ってまたアンタ」


「ああ」


店は昼間より確かに繁盛していた。


「1人、1人ならカウンターで良い」


「いや、2人」


大の後ろに隠れるように、シオリがカフェにやって来た。


「2人なら、奥の席が空いてるよ」


「わかった。行きましょうシオリさん」


シオリは初めて来た飲食店、特に人の会話が群がるカフェなどには弱い。知らない人と話すのが苦手なのだ。


「ここですよ」


窓際のわりかし見晴らしの良い席。


「いらっしゃいませお客様。当店バイキング形式になっていますので、あちらの方からお好きな料理をご自由にお取りください」


香坂以外にも店員がいたことが一番の意外だった。しかも可愛い。


『可愛い……』


「じゃあ、とりあえず飲み物と料理を取りに行きましたょうか」


『せ、そうね……』


あんパンよりは美味いはずだ。





「かんぱい」


『かんぱい』


お茶が入ったグラスとカシスオレンジのグラスが触れ合い、柔らかな和音を響かせる。


「美味い」


『ただの烏龍茶じゃない』


やはりまだ怒っている。


まあ焦らず行こう。