2LDKのお姫様

彼氏の横で顔を真っ赤にしてあんパンを食べる彼女なんで、シュールすぎる。


「………っ」


大は耐え切れず、笑ってしまった。


『な、何よ』


怒ってはいるだろうが、いつもの彼女だ。意外に仲直り出来るかもしれない。


「はぁ……、そんなにお腹空いてたんですか」


笑いを堪えきれない。


彼女が三度の食事とおやつ以外で、モノを食べている所なんてあまり見たことが無い。


よほどお腹が空いていたのだろう。


『何か悪い。私だってお腹くらい空くわよ……』


車内に広がるあんパンの淡い酒臭と珈琲の香り。


「シオリさんがあんパン食べてる所なんて初めて見ましたよ」


『あんパンくらい私だって食べるわよ……』


よほど恥ずかしかったのか、あんパンを食べるのをやめ髪の毛を解いて、顔を隠すように髪を横に流した。


四つ角で信号にはまる。


「お腹空いてるなら、良いところがありますよ」


大はそう言うと、帰る方向とは違う道へ曲がった。


「この先にカフェがあるんです。バイキング形式で、凄く美味しいんですよ」


あのカフェへ。この仲違いの元凶の場所へ、向かうのだった。