2LDKのお姫様

タイムマシンを本気で探そうと思った事があるだろうか。


俺は今、切実にそれを探したい。


父親の何か大切なものを壊してしまった時の子供の様に、切実なのだ。


「あの、シオリさん」


意外にもシオリの部屋の鍵は開いていた。


「入りますよ……」


恐る恐る、中へ入る。


『……』


入ってすぐにシオリを見つけた。


ベッドのそばに座って、顔はまだ埋ずめたままだ。


「……」


その姿を見て、自分のした事の重大さを改めて実感した。


シオリの部屋は相変わらずさっぱりしている。いやシンプルと言えば良いのだが、何不自由のないシンプルさなのだ。


「シオリさん、あの……」


『何よ』


真っ赤な目が大を睨む。


「………ん」


怖い。目付きの悪い大でさえもその物凄い眼光にはたじろいでしまう。


しかしこのまま流されて、彼女に任せて、もし解決できてもそれでは駄目だ。


「今日、記念日でしたね。忘れてました」


『今ごろ思い出したって……』


許せるはずが無い。


『こうやって忘れていくのよ。記念日も、私のことも。好きじゃないなら、もう付き合ってなくて良い』


「好きじゃないなんて……」


『大くんは、本当は、私のこと好きじゃないのよ』


「好きですよ」


『好きじゃないわ。好きなら普通、忘れるはずがない』


シオリは、この日を忘れたことは無い。